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蔵原惟繕監督と周辺の芸術家達
- 67 :名無しのAA書きさん:2003/08/21 20:00
- 「銀座の恋の物語」脚本;山田信夫・熊井啓、
企画;水の江滝子、撮影;間宮、音楽;葛木創、
助監督;西村昭五郎
石原裕次郎は画家の卵、ジャズ喫茶のピアノひきジェリー藤尾
と銀座裏の屋根裏部屋で同居。ボヘミアン生活をしている。
裕次郎は天涯孤独なお針子の浅丘ルリ子を愛している。裕次郎
はルリ子のポートレイトの作成に没頭していた。ジェリーはバ
ーテンたちの企てで、ピアノ弾きをクビ。
裕次郎はルリ子との結婚報告をするため、信州の母のところへ
行く。旅費稼ぎの為ルリ子のポートレイトを清水将夫画商に売
却する。信州行きの当日、新宿駅へと急ぐ途中で、ルリ子は車
にはねられ、消息不明となる。裕次郎もジェリーもヤケクソに
なり、ピアノを回収にきた月賦屋を殴って留置所送り。
やがて悪の道に走ったジェリーは豪華アパートに住み、裕次
郎が売却したルリ子のポートレイトも所持していた。
そんな折、裕次郎はデパートに流れる鶯嬢になったルリ子の声
を耳にする。ルリ子は先の事故で記憶喪失になっていた。
一方、ジェリーは偽造ウイスキー製造で警察から追われていて、
そんなある日、ルリ子を訪れポートレイトを渡す。
さて、その先は如何に。記憶は戻るのか?
以上があらすじ。マー、この作品を何回見ただろう。思い出深い
ショットがたくさんある。あたしはVを持たない主義で、記憶
だけが頼りで、ネット検索から情報付加している。
夜明けの銀座道り三丁目あたりを人力車を引く裕次郎を
ハンドキャメラが追いかけてゆくタイトルバック。
下宿先の屋根裏部屋でジェリーが「あの歌」をポロリと弾くと、
そのままカメラは窓を接した洋裁工房をとらえ、ミシンの
音がリズムを刻んで、和泉雅子が次を口ずさむ、ワンカット。
ミュージカルじゃんと思った。トランペットをふく青年のショ
ット。洋裁工房を下から見上げるショットは「ウエストサイド
」みたいだった。
裕次郎がルリ子のポートレイトを画商に売却するのに、
ルリ子は額を買う行き違いはオー・ヘンリーの「賢者の贈り物」
の味。
夜のデパート(旧、松屋)の屋上での電飾の白熱のショット
よし。
そしてルリ子が記憶を取り戻そうとする葛藤、新しく
芽生えたお互いの愛を確かめながら、過去の追体験を重ねて
ゆく。このプロセスが甘美にしてサスペンスフルで、BGM
もかなり凝っている。まるで、J・ヒルトン原作=M・ルロイ
監督の「心の旅路」の記憶喪失のスミスと踊り子ポーラが逆に
なった趣あり。小道具のオモチャのピアノ、伏線のはり方もセ
ンスよし。
この映画は裕次郎もよいが、愁い、薄幸(空襲で両親を失い天
涯孤独)、かつまた記憶喪失になったルリ子はとても美しい。
ジェリーも「地平線がぎらぎら」(土井通芳監督)と並ぶ
ハーフの役(映画では差別用語)熱演。ラストの群集の中の
江利チエミはペーソスあり、余韻に残る。
そこで、映画史的総括。
「赤い波止場」(舛田利雄監督)がその嚆矢といえるが、
本品は日活ムード・アクションの流れをつくった一大メルクマ
ールであり、旭ールリ子路線から、裕次郎ールリ子路線ヘの
ギアチェンジである。水の江が蔵原を口説いた時、蔵原は
渋ったという。だから、力まない傑作が産まれた。
なお、「銀恋」は「街から街へつむじ風」(松尾昭典監督)の
挿入歌です。念の為。
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